阿部さんの自己紹介|GameWith創業から現在の活動まで
関口:今日は株式会社CINCAの代表で、元GameWithの創業メンバーである阿部さんに来てもらいました。よろしくお願いします。
阿部:よろしくお願いします。
関口:まず最初に、阿部さんの自己紹介をお願いします。
阿部:今、株式会社CINCAの代表取締役社長をやっています。元々のキャリアとしては、MIXIでUI/UXデザインを担当していて、その後友人と一緒にGameWithというゲームのメディアを創業しました。その会社に約9年ほどいましたが、その後、今CINCAという会社でエンタープライズ向けの新規事業の立ち上げ支援のようなサービスを行っています。
関口:僕も元々ゲームエイトという会社にいて、競合認識してもらえているかと思っていたんですけど、そんなこともなく色々なことを同じ領域で戦っていた時から教えてくださったりしていて、今もお世話になっています。今回動画に出演したいとおっしゃってくれたので、撮影をしています。僕の認識だと阿部さんはプロデューサーとかマーケターという認識が強いんですけど、どういう経歴で株式会社MIXIでWebデザインの道へ進まれたのでしょうか?
Webデザイナーになった経緯について
阿部:元々、僕はデザイナー志望だったんですよね。最初は、広告代理店の子会社で普通の広告製作のデザイナーをやっていたんですが、パワハラだったり色々なことがあって辞めてすぐにMIXIに入りました。その時期が非常に面白い時期で、MIXIが上場後初めて赤字を出したタイミングだったんです。社長も笠原さんから、朝倉さんへ変わって、mixiだけでなく新規事業をたくさん立ち上げる時期で、採用も増えていた時期です。それがすごく楽しい時期で、MIXIではUI/UXのデザインを担当していました。
関口:デザイナーだったんですね。全然知らなかったです。GameWithの創業メンバーとして立ち上げに関わっていたと思うんですが、そもそもどういう流れで…?
GameWith立ち上げに関わった経緯とは
阿部:GameWith代表の今泉は、学生時代のバイトが一緒だったんです。「mixiが本体サービスヤバいぞ」ってなったとき、新規事業に色んなことで関わらせてもらったんです。めっちゃ楽しかったんですが、当たる事業が見つかったタイミングで、デザイナーはデザインだけをやるという縦割り組織に戻ってきたときに、逆に窮屈に感じたというか…。
関口:はい。
阿部:それまでは、新規事業に関わること何でもやってよい感じだったから、デザインの作業に戻ると窮屈に感じて。そのタイミングで今泉から誘われた、という感じですかね。「こういうサービス作るんだけど…」って。元々コミュニティサービスの構想だったので、MIXIで得た経験も活きるかなと創業に参加しました。
関口:最初、Q&Aをやっていましたよね?
阿部:そうですね!誰も知らないと思うんですけど。
関口:僕もその領域で個人で攻略サイトを作っていたので、「こんなサイトがあるぞ!Q&Aか。これ…PV取れるのかな…」って思っていました。
阿部:そうなんですよね。Q&Aは、ゲーム攻略と相性が悪い。ゲームってアップデートが入るたびに情報が変わっていくので、3ヶ月前のQ&Aの回答が間違った回答になっちゃっているんです。それがSEOでクローラーが周ってインデックスされるので、間違った情報ばかり出るサイトになっちゃって…。そこでメディア型にピボットしました。そしたら、マックスで月間9億PVまで成長しましたね。
関口:間違った情報でコミュニティやめて、記事の方に振り切ったのが全盛期の2013~2014年ころだと思うんですけど、そこからどうやって組織を作っていったんですか?
月間9億PVを叩き出した組織の成り立ち
阿部:組織は…正直あまり覚えていないです。「がむしゃらにやったら、できた」というところで…。
関口:そうなんですね。
阿部:ゲーム攻略のライターにおいて、採用は凄くしやすかったですね。ゲームをやっている人が、ゲームを仕事にでいる環境がなくて。無名の会社でも、募集を出したら応募してくれた。その中で、選んで本当にゲームをガチでやり込んでいる人だけを採用して、そこにライティングの知識やSEOの知識を教え込んでいった。
阿部:多分同じステップで関口さんもやったと思うんですが、真逆のステップももちろん試しました。ライター経験者だったり、雑誌編集部で働いていた人を採用して。その人達にゲームをやり込んでもらうという、逆のステップも試しました。
関口:はい。
阿部:ただ、これはあまり上手くいかなかったですね。
関口:それは何でですか?
阿部:ゲームに対しての熱量が、絶対に追いつかないんですよね。
関口:あー!彼ら(ゲームをやっている人)は、24時間やり込んで記事を書くじゃないですか。「トップになりたい!」みたいな勢い。
阿部:その情熱は後付けできなかったですね。後から知りましたがRIZAPも同じ感じで、栄養学とかトレーニングの知識を後からインストールさせるんですよね。トレーナーにコーチングの知識をインストールするのは無理で。事業における、絶対外しちゃいけない人材用件を早めに見つけて採用できたことが、組織作りで良かった点だと思います。
関口:おもしろいですね。良いライターが全部GameWithに行っちゃうので。本当に人材採用は大変でしたね。
阿部:株式会社CINCAにおける、新規事業の立ち上げ支援も似たような感じで、新規事業経験者を採用していないんです。新規事業の支援をやっているのに。
関口:はい。
阿部:どちらかというと、スタートアップとかある程度小さい会社でハードワークして乗り越えた経験のある人を採用基準として大きくなっていますね。その方が、大企業で新規事業をやっていた人よりパフォーマンスが高い確率が高いです。
関口:それって精神的にも強いし、新規事業は本当に何でもやる必要がありますよね。
阿部:本当に何でもやりますよね。
関口:しかも、体力あるじゃないですか。だから確率が上がっていくんですかね?
阿部:絶対ありますね。最後は行動量になるので。
関口:そういう人材って、どこから見つけてくるんですか?というのも、僕の会社でも小さい会社で働いていて、会社が上手くいかなかったので入ってきてくれた人がいるんですけど、すごい優秀。こういう人いないかなって探しているんですが、どこから見つけてくるですかね?
優秀な人を見つけて採用した方法
阿部:採用媒体で使っている物は、一般的なものですね。ダイレクトリクルーティングとか、一般的な求人サイトを使っています。ただ、他の会社と採用要件をズラしています。
阿部:スタートアップ・小さい会社って、採用で大手とも競るじゃないですか。同じ人に対して大手もオファーを出していて、負けちゃう可能性が高い。僕らしかオファーを出していないような人かつ、僕らの要件に当てはまる人を見つけることが重要だと思っています。それが、独自の採用用件があるっていう感じです。
関口:阿部さんはいつも、すごく長い評価基準を作りますよね。
阿部:エントリーは、特定の「これ」というポイントを見つけてやっている感じですね。
関口:大手が競らないような採用戦略を取ると、意外と良い人が見つかります?
阿部:そうですね。イメージとしては、パフォーマンスを潜在的に持っている人ですね。大手とかメガベンチャークラスになると、過去のキャリアで採用するんですよね。うちの会社の場合は、過去のキャリアではなく、潜在的に持っているパフォーマンスを評価しています。見抜けない可能性もあります。
関口:GameWithのときもそうだと思ったんですけど、採用に力を入れているとサイトに貼り付けているだけで毎月何百人とかって来るじゃないですか。学歴ってどう捉えていました?
関口:ゲーマーって、正直言うと結構頭トチくるっている人間が多いかなと思っていて。ゲームエイトの場合って、初期は「居酒屋でアルバイトしてました!」って人しか来なかったんですけど、その後入ってきた人達は高学歴ばかりだったんですよね。GameWithもそうなんじゃないかなと思うんですが、いかがですか?
阿部:結構パフォーマンスと相関していますよね。ただ、別にそこで選んで採用はしていなかったですね。採用基準は別の所にありました。別の採用基準で取ったんですけど、「パフォーマンス出した人を集めたら、そうなるよね。」っていう感じになりましたね。
関口:外れないよねっていうくらい、ですね。
阿部:GameWithの時は、応募時にロジカルシンキングのテストが応募フォームにあって、それはすごく簡単な問題なんですよ。例えば、「コインロッカーの売り上げを伸ばすには、どういう変数があって、どこのレバーをいじりますか?」のような問題です。それは、Yahoo!知恵袋に解答が書かれていましたね(笑)。Yahoo!知恵袋で質問している人がいて…。
関口:ある意味、その人は頭が良い(笑)。今振り返って、月間9億PVは国内でトップ10ぐらいのアクセスかと思うんですけど、なぜそんなにサイトが伸びたんだろうって思っています。
なぜそこまでサイトを伸ばすことができたのか
阿部:メディア事業なので、検索流入数が多かった。検索クエリがある領域で戦ったのが、大前提1番良いところ。そうすると、競合も多いわけじゃないですか。その時に、今の新規事業の支援でも通ずるものがあるんですが、「独自のゲームルールを見つけた」と思っています。「その市場で勝つための、ゲームルールを解き明かした。」みたいなニュアンスが近いと思います。
関口:はい。
阿部:当時のゲーム攻略におけるSEOメディアの勝ち筋って何かというと、僕は「組織作り」だと思います。他の企業の方から、「伸び方すごいですね」「SEOすごいですね」と言われるんですけど、SEOって枝葉の話で。ゲーム攻略のメディアって、ゲーム単位でメディアが量産されるイメージじゃないですか。1個のサイトではなく、ゲームごとにメディアがある。優秀なSEOをできるディレクターが、メディアごとに必要になるんですよね。それをどれだけ社内に抱え込むかのゲームかなと思っていて。そんな人材は市場にはいないです。例えば、ゲームが理解できて、SEOもできて、ライティングもディレクションもできるなんて人材はいないんで。それを社内でどれだけ早く育て上げるか。育て上げた後に、その人の離職率をどれだけ下げて長く働いてもらうか。そういう、組織作りのゲームだと僕は捉えていました。
関口:阿部さん社内で「副業やってみませんか」って、SEOを教えていましたよね。この人は何をやってるんだろうって(笑)。社内で副業を推進する人、多分いないですよね?
阿部:でも、いま振り返ると思いませんか?テクニカルなSEOだけをずっと追っていたメディアとか、大体がもういなくなっていません?
関口:いなくなりますね。ハックに振り切ってしまうと細部まで深掘りできないんで。Cookpadがまだ生きているのは、そういう事なんだろうなと思いますね。
阿部:トレンドの流れに左右されますもんね。
関口:その度に心が折れて、もうやりたくないと思ってやらなくなりましたね。
阿部:本質的には、「良いコンテンツをどれだけ量産できるか」があれば。一時的にアルゴリズムの変動で落ちたりはするんですが、本質的にはずっと勝っているのかなって思ってます。
関口:最たる事例がマイベスト。あそこまでやり切ると!
阿部:すごいですよね。全部の商品買っているとか無理。
関口:1回倉庫だけ見させて欲しいなと思いますね。
(僕のイメージだと、GameWithさんって本当にゲームメディアのトップだと思っていて、色々ある中でも勝ち切れた1番の要因って何でしょうか?)
関口:その時天下のGameWithさんは、ゲームエイトとか他のメディアをどう思っていたか、も聞いてみたい!
業界トップから他のサイトはどう見えていた?
阿部:正直、無茶苦茶焦っていました。追い上げが凄すぎて。追い上げがすごい中で、こっちは上場準備とかでやれないことがどんどん増えていくんですよね。働き方の話とかもまさにそうです。焦り方がエグかったですね。
関口:僕に色々教えてくれるから、こっちも情報渡しちゃおうみたいな。これ、やって良いのかな?みたいな…。会社に後で怒られるんじゃないかとか、思いながらしゃべってましたけど。
阿部:同じゲーム上で戦うと負けるなと思っていて。別のルールで戦わないと、いつか追いつかれるなと思っていたので、別の商品をどんどん開発していっていました。お金をもらって運用する型のメディアに力を入れたり、YouTubeもありましたし。
阿部:ゲーム実況をYouTubeのライブで始めた頃に、まだゲーム実況をしている人がいなくて。皆、大体がニコニコ動画だったんですよね。それをYouTubeライブで始めたら、YouTubeの担当の方から感謝されましたね。「ゲーム実況の文化を広めてくれてありがとう」、みたいな。
関口:今の基準を作ったってことですね。
阿部:こんなに皆がゲーム実況をライブでするとは思わなかったですね。2014・15年くらいにおいては、YouTubeライブの同時接続ランキング1位がトランプ大統領の演説で、2位がうちの会社でしたね。「グローバルでそうなんだ」って。
関口:そんな数字を見ていたら楽しいですよね。
阿部:同時接続15万人とかいってましたからね。
関口:それ、今の大谷翔平のワールドシリーズとか、WBCとかの接続と同じくらいですよね。
阿部:市場ができるタイミングだったんですよね。
関口:参入タイミングがすごく良いですよね。あと1個忘れていたんですけど、安部さんその後、子会社の代表になっているじゃないですか?あれって、どういう経緯なんですか?
どういう経緯で子会社の代表に就任したのか
阿部:それもゲームルールを変えなきゃって思ったことが1個あって、ゲーム攻略メディアを運営している会社が何社かある中で、検索ボリュームが多いタイトルを扱っていくじゃないですか?小さいタイトルは、誰も攻略メディアを作らない状態になっていくんで、そこを束ねてトラフィックを集めなきゃいけない。ただ、ライターとかディレクターはアサインできない。100%採算が合わないので…。そうなるとCGM※しかないなと思っていて。
CGMとは:掲示板や口コミサイトなど、一般のユーザーが参加してコンテンツができていくメディアのこと
阿部:CGMを社内で作るのかどうするか検討していたところ、ご縁があって売却のご相談が来たので、そこでGameWithが買ってPMI(統合)した。
関口:「@wiki」って岐阜でしたっけ?
阿部:和歌山にありましたね。
関口:あれ買ったの?すごい!
阿部:買いたかったのは、買う2年くらい前からずっと探していて。ただ、創業者の方が何のコミュニティにも所属されていなかったので、全然繋がれなくて。たまたま2年後に繋がれた。
関口:そんなに前から動いていらっしゃったんですね。やっぱり、トップの人たちって動くの早いですよね。
阿部:色々仕込んだセ策の内の1個がたまたま繋がった。
関口:そこから文化とかいろいろ一気に書き換えていったんですね。
阿部:そうですね。買うタイミングでトラフィックが安定していて、年次で数%ずつ伸びている状態だったんで。ただ、アドセンス回りのマネタイズが苦手な会社だったので、そこを整えて後は評価制度を作りました。エンジニアの方にやる気になってもらってとか、基礎的な当たり前のことを全部やり切ったらすぐ黒字になった。
関口:すごい速さでその話を聞いたので、さすがだなと思いました。
「原体験が大事」はウソ?新規事業で重要な点とは…(続く)