本記事では、生成AI(ChatGPT)を活用して大量のコンテンツを制作してメディアを運用実験した結果を実データをもとに公開します。この実験は、AIツールの実用性と効果を検証することを目的としています。
昨今、SEOに関する情報発信しているブログやSNS等で、「AIライティングに手は出さない方がよい」といった記事が散見されます。また、実際に「生成AIで作ったメディアのアクセスが激減した」などという情報も目にします。
それらの情報に疑問を持った弊社は、実際に生成AIを用いて大量コンテンツを生成し、運用実験を行いました。
弊社での運用実験に関する概要
この運用実験では、生成AIと人間の協働による効率的なコンテンツ制作の可能性を探ることを目指しました。
また、今回の運用実験において、弊社は実際に生成AIが勃興する前から運用していてトラフィックが月間100万PV以上あるメディアを用いて、今回の実験を行いました。
運用実験の前提
- コンテンツのアップロード時期
-
2024年3月末〜2024年4月
- 制作期間
-
1ヶ月間
- 制作本数
-
650本程度
- 記事の制作カテゴリ
-
エンタメ
- メディアDR
-
12(Ahrefsから算出)
- 使用した生成AIツール
弊社で実施した生成AIコンテンツの制作手順
運用しているメディアの計画をもとに、攻めるべきカテゴリを決定します。
攻めると決めたカテゴリのキーワードをスプレッドシートに徹底的に洗い出します。
キーワードは、関連キーワードもまとめておきます。
構成案を生成AIに作成してもらいます。出力された結果をもとに、精査したキーワードやユーザーのニーズを満たせていないものを加筆します。
今回は、大量生成が前提にあるため、同じような構成でユーザーのニーズを満たす記事構成が作れると判断したため、GoogleAppScriptで特定の条件の内容のみコピーして構成を大量生成します。
構成の作成が完了したら、次にプロンプトの開発です。サンプル記事を1本作り込みながら、プロンプトを開発します。実際に執筆はせず、構成が意図する内容を執筆できるようになるまでプロンプトを繰り返し作り込みます。
上記の画像はプロンプトの一部ですが、実際には上記の10倍ほどのプロンプトを作り込んでいます。
開発したプロンプトをもとに制作を一気に進めます。
運用結果
実験の結果、以下のような成果が得られました。
- トラフィック
-
月間35万PV以上の増加を記録し、現在も安定した成長を継続中 (GoogleAnalytics参照)
- 制作コスト
-
従来の制作方法と比較し、コストを90%以上削減
公開後2ヶ月で制作費用を回収 - 制作期間あたりの制作数
-
従来の制作体制と比較したときに、およそ20倍の効率化を実現
さらに、SEOに全く知見のない主婦の方やサラリーマンの方が記事のほとんどを作成・公開。 - 収益化
-
月間15万円以上の収益化を達成し、現在も安定して成長中
- エンゲージメント
-
7分以上の平均滞在時間を記録
また、制作した記事コンテンツは公開後、一度もリライトはしておらず、堅調に成長をしています。
これらの結果は、生成AIがコンテンツ制作において一定の効果を持つと考えられます。
Googleアップデートの影響と対策
弊社の取り組みは、2024年3月に実施されたコアアップデート中に実施しております。3月のアップデートの対象の一つに「順位操作・獲得を目的とした大量のコンテンツ生成」がありましたが、影響を受けることはありませんでした。
また、2024年5月と6月にロールアウトされたのGoogleスパムアップデートについても影響を受けないどころか、堅調に成長し続けました。
各ポリシーへの対策
ここでは、生成AIに関するGoogleのポリシーの概要を確認し、弊社でどのように対策をしたのかを解説します。弊社では、Googleの各ポリシーを正しく理解することで、「言語化できる全ては生成AIに任せられる」と考えています。
そのうえで、生成AIに関するGoogleのポリシーと対策について解説します。
スパムポリシー
Google ウェブ検索のスパムに関するポリシーにおいて、生成AIおんコンテンツを最も関係するのは下記でしょう。
大量生成されたコンテンツの不正使用
大量生成されたコンテンツの不正使用とは、ユーザーをサポートすることではなく、検索ランキングの操作を主な目的として大量のページを生成することを指します。この不正行為は通常、ユーザーにとってほとんどまたはまったく価値がなく、独自性のないコンテンツをその作成方法は問わず、大量に作成することに特化しています。
大量生成されたコンテンツの不正使用の例には次のものがありますが、これらに限定されません。
- 生成 AI ツールまたはその他の同様のツールを使用して、ユーザーにとっての価値を付加することなく大量のページを生成すること
- フィード、検索結果、その他のコンテンツをスクレイピングして、ユーザーにとってほとんど価値がない大量のページを生成すること(類義語生成、翻訳、その他の難読化手法などを使用)
- 複数のウェブページからのコンテンツを、価値を加えることなくつなぎ合わせたり組み合わせたりすること
- コンテンツを大量生成したことを隠す目的で複数のサイトを作成すること
- 検索キーワードは含んでいるものの、閲覧者にとってほとんどまたはまったく意味がないコンテンツのページを大量に作成すること
このようなコンテンツを自分のサイトでホストしている場合は、検索から除外できます。
Google検索セントラル
生成AIに関するポリシー
次に、AI 生成コンテンツに関する Google 検索のガイダンスにおいて、下記がポイントになります。
制作方法を問わず高品質のコンテンツを評価
Google のランキング システムは、E-E-A-T(専門性、エクスペリエンス、権威性、信頼性)で表される品質を満たした、オリジナルかつ高品質のコンテンツを評価することを目的としています。この詳細については、検索の仕組みで説明しています。
Google検索セントラル
省略
質の高いコンテンツの評価に重点を置くことは、Google が創業以来、軸としてきたことです。その方針は今も変わらず、信頼できる情報を表示するように設計されたランキング システムから、ヘルプフル コンテンツ システムにまで徹底されています。昨年導入したヘルプフル コンテンツ システムは、検索でよい掲載順位を獲得することを目的としたコンテンツではなく、ユーザー第一に作成されたコンテンツを検索者が確実に見つけられるようにするための仕組みです。
AI 生成によるコンテンツ作成を検討している方へのアドバイス
すでに説明したとおり、コンテンツの作成方法を問わず、Google 検索で成功を収めるには、E-E-A-T の品質を満たす、オリジナルで高品質な、ユーザー第一のコンテンツの制作を意識する必要があります。
Google検索セントラル
弊社が制作に際して実施した対策と考え方
結論、上記の2つのポリシーから良質なコンテンツが作れているのではあれば作成方法は問われないため、生成AIを使用の有無に関わらず、コンテンツの設計段階において前述した制作手順1〜3で、執筆カテゴリにおける良質なコンテンツを定義することで対策しました。
弊社では、「自社のメディアのコンセプト」と「ユーザーにとって良質なコンテンツ」から逆算して、プロンプトの設計から入ります。つまり、生成AIは、あくまでも人間の工数を代行する役割として位置付けているのです。
そのため、生成AIで大量生成しても、アップデートの影響を受けず、安定した成果が出せていると考えます。
昨今、キーワードを入力するだけで記事を生成してくれるツールがローンチされておりますが、今回の弊社の取り組みに対応できるものはありませんでした。(2024年4月時点)
むしろ、キーワードを入力して記事をフルオートで制作することの方がリスクであると考えており、短期的にトラフィックが獲得できてもすぐに陳腐化してコンテンツになってしまうと懸念しています。
生成AIを記事制作に導入すべき5つのケース
ここでは、生成AIを活用して事業全体として生成AIを取り入れるべきケースを5つにまとめて解説します。
- ケース1. 限られた予算でのコンテンツマーケティング
-
コンテンツマーケティングの必要性を感じていて実施していきたいが、マーケティング予算が限られていてなかなか実施できない企業様は生成AIの活用を進んで行うべきだと考えます。
- ケース2. 新規カテゴリにおけるテストマーケティング
-
Webメディアを運営していると、どのカテゴリで順位が獲得しやすいか、メディアとの相性を考慮しながら、キーワードの選定を行なっていくかと思います。その際に、生成AIを活用したテストマーケティングは有効です。
- ケース3. 専門家監修との組み合わせによるコンテンツ制作
-
医療、法律、金融など専門性の高い分野で特に有効だとも考えます。専門性が高い領域のコンテンツ製作には人的リソースや制作費用など膨大なコストがかかります。領域に特化したライティングができる方の採用にも苦戦するでしょう。
社内に専門家がいる場合、コンテンツの専門性を確実に担保して制作を進めることが可能です。 - ケース4. 答えのないカテゴリでのライティング
-
弊社で実施したエンタメ領域など、答えが人によって異なるカテゴリにおいては、生成AIを活かすことができます。
- ケース5. 定義が明確なカテゴリにおけるライティング
-
同様に、定義がはっきりしている領域でも生成AIを活かすことができるでしょう。
弊社では、エンタメのほかにビジネス領域でもテスト制作を実施しており、同様の成果が見込めております。
生成AIのコンテンツ制作への活用
今回は、主に弊社の運用実験のアプローチ方法やその結果をお伝えしました。
本実験の結果から、生成AIはコンテンツ制作の効率化と品質維持の両立に一定の効果があることをお伝えできたのではないでしょうか。しかし、その活用には慎重なアプローチが必要であるとも考えます。
サイトが飛んでからでは取り返しがつかないため、運用しているメディアにおける参入カテゴリの選定や大量生成するタイミングなど、考慮すべきことが多々あるため注意が必要です。
※本記事の内容はあくまで一つの実験結果であり、すべての場合に同様の結果が得られるとは限りません。各企業や個人の状況に応じて、慎重に検討し、適切に活用することが重要です。